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痴呆症

痴呆症について

「最近忘れっぽくなってきた」
「家族がボケてきたのではないか」

このような心配をしている方はたくさんいらっしゃいます。
最近はテレビや新聞で「痴呆症」とか「アルツハイマー病」という言葉を目にする機会が増えてきており、悲惨な状況ばかりが強調されているのか不安が増すばかりと言う方も多いようです。
「病院へ行ってちゃんと見てもらいたい」と思っても

「どこへ行ったらよいのか分からない」
「早めに行った方がよいのか、もっと進んでからでよいのか」

といった問題があり、なかなか病院を受診するところまでは行かないようです。

どこへ行ったらよいのか?

もの忘れ外来へ行って下さい。お近くになければ、神経内科や精神神経科、脳神経外科の病院で診てくれると思います。いきなり受診せずに問い合わせてみると良いと思います。

いつ行ったらよいのか?

早めに行って下さい。もし違っていれば安心ですし、万が一アルツハイマー病などの痴呆症であったとしても早いうちであればより薬の効果が期待できます。

「もの忘れ」と「痴呆」と「アルツハイマー病」、そして「認知症」

言葉は症状や病気を表す為に使われています。「痴呆」という言葉はわずか漢字二文字ですが実に多くのことを表してくれる便利な言葉です。ただし、その言葉を使う人が十分に理解していなかったり、別の人が別の意味で使っていたりすればややこしいことになります。

このページで使う言葉の意味を少し明確にしておいた方が良いかも知れません。外来でお話をしていると「もの忘れとアルツハイマー病は違うんですか?」と言われることがあります。「もの忘れ」や「痴呆」は症状の名前でそれぞれ異なりますし、痴呆症状を呈する病気を総称して「痴呆」もしくは「痴呆症」と呼びます。「アルツハイマー病」は数多くある痴呆症のなかの代表的な病名であると考えていただければよろしいかと思います。

2004年の12月から行政で使う言葉は「痴呆症」のかわりに「認知症」という言葉を使うことになりました。痴呆症状を呈する病気を「認知症」と呼ぶと言うことだと思います。目的は「痴呆」という言葉に対する偏見や差別的な考え方をなくしていこうという啓蒙活動の一環です。病名など医学用語の中には痴呆という単語は残ります。

もの忘れ

「もの忘れ」は当然覚えていると思われることを忘れてしまうことを指します。「思い出せない」と言うよりは「覚えられない」ことの方が多いと思われます。医学用語としては記憶障害とか記銘力障害などといわれます。症状としてのもの忘れの特徴は、昔のことよりも最近のことを忘れてしまうこと多いことで、「若い頃の話はよく覚えているのに今朝何を食べたか覚えていない」といった状態になります。その他には時計や財布などを置いた場所を忘れてしまったり、御家族に言われたことを忘れてしまって同じ話を繰り返してしまったりといった症状がよく見られます。

痴呆

痴呆とは単なるもの忘れではない病的な状態を指します。注意力や理解力、言語機能などの記憶力以外の脳の知的機能が障害され、日常生活が困難となる状態を痴呆と呼びます。もの忘れと痴呆の間に明確な線を引くのは難しいです。記憶力の低下などのために今まで通りの生活を送ることが明らかに困難になってきたならば、痴呆と考えて良いかもしれません。

アルツハイマー病

痴呆症を呈する神経変性疾患です。痴呆の原因となる最も多い病気です。軽いもの忘れで発症し少しずつ何年もかけて進行していきます。MRIなどの検査を行うと進行とともに脳がやせていく(萎縮と言います)ことが知られています。特に「海馬(かいば)」と呼ばれる脳の記憶の中枢がやせていきます。

外来で様々な検査を行い「アルツハイマー病と考えられます」「アルツハイマー病と考えて矛盾はないと思います」といった診断がつけられます。専門家が十分な検査を行った上でつけるこうした診断は信頼性がおけるものではありますが、確定診断ではありません。現在の医学ではアルツハイマー病をはじめとする痴呆性疾患の臨床診断は非常に困難です。確定診断は亡くなった後で剖検(病理解剖)を行い初めて可能となります。アルツハイマー病の場合は顕微鏡で見ると「老人斑」と「神経原線維変化」という正常ではあまり見られない変化が多く認められます。ベータアミロイドとタウという物質が蓄積していることが分かっています。

認知症

認知症は今のところ行政で決まった言葉です。痴呆症の言い換えだと理解しています。すべての人がこの言葉に賛成しているわけではなく行政以外の所では痴呆症と言う言葉も残っています。また認知症よりもっと別の言葉がよいと言っている人たちもいます。偏見をなくす目的で言葉を替えようとしても、新たな誤解が生まれるだけかも知れません。ただ議論が生まれることは「認知症」という言葉を導入した目的に叶っているのかも知れません。最終的にどのような言葉に落ち着くにせよ、痴呆症に対する一般的な知識が広まり偏見のない正確な理解が広まれば良いと思います。言葉が悪いわけではないので言葉を替えて満足するのではなく、啓発活動を続けていく必要があるのでしょう。